グローバリズムについて 2005/06/10
人件費が安いと中国などのアジアへ、コストの理由から工場を移し、製造だけでなく最近ではソフトウェア関連やサービス関連でも拠点の海外移転が注目されている。
人件費が安いから開発拠点やサービス拠点を海外に移す、というのは非常に危険だと思っている。というのは、中国のほうが人件費が安い、というのは、「虚構」でしかないからだ。
経済学として専門的なことは知らないが、人件費が安い、などということは、「為替が安く交わされている」という人為的な決め事から来る結果でしかない。
「中国のほうが人件費が日本と比べて10分の1」=「人民元と円がそのレートで交換されている」結果に過ぎず、たとえば明日から交換レートを変えれば、一瞬にして、その人件費の優位性は崩れる。
日本の産業で最も海外進出が成功しているのは言うまでもなく、自動車産業だが、
なぜ成功しているかと言えば、日本で生産した車を海外へ輸出するのではなく、海外で販売するものに対しては海外の工場と人で生産すべきだ、という思想、姿勢を90年代に明確にもったからだろう。
日本車が北米で快進撃を続けているのにも関わらず、80年代や90年代前半のような、
日本車バッシングは行われず、ハリウッドスターもハイブリッド・トヨタ車をさらに好む。
これは、米で販売する車は米の工場と人で日で販売する車は日の工場と人でというスタンスを築いているからだ。
北米でいくら日本車が売れようと、それは「資本の国籍」が日本というだけで、造られる工場も人も北米なので、労働者や一般市民からの反感はおきにくい。
これとは対照的な代表格はナイキだ。開発コストが安いからという理由だけで海外へ開発拠点をかまえ、生産過程における搾取的構造にさまざまな非難がされて、下請け工場情報の公開に踏みきざるを得なかった。今後さらに改善を求められるだろうと思う。
仏蘭のEU憲法の国民反対決議で明らかになったEUの混乱も、人件費が安いという理由で、労働やリソースの東欧への安直なシフトが行われたからに他ならない。
ひとつの国の資本主義の進化は、
第一次産業→第ニ次産業→第三次産業
へと進むとされてきたが、これは古典的ですでに古いと思う。日本あたりは、繊維産業から産業を育て、製造業へ進み、知的産業へと経済の教科書的な進歩を遂げたが、現在にこれが当てはまるだろうか。
先進国は第一次、第二次産業はやるべきでなく、発展途上国にまかせ、高付加価値とされている第三次産業や知的産業のみを先進国の国民はすべきだ、せざるを得ない、というのも冷静に聞けば、奇妙きわまりない。
それこそ先進国に生まれた人たちは窮屈さに窒息死するだろうし、第一次産業、第ニ次産業を「発展途上国」とされている国民たちがやり続けるだろうか。
さらに言えば、この考えそのものが、南北問題や人類の資産の90%以上を数パーセントの人間が所有する状況を生み出しているとも思う。
現在、人類が経験したことのないグローバリズムが進んでいるが、この進歩を成功させるには、逆説的だが「自国のものは自国で」、というのが不可欠な条件になってくるはず。「資本の国籍」は海外でもなんでもいいが、実際の製造と人はその国で行う、ということが当然な企業の姿勢になると思っている。
written by 株式会社ソーソー代表取締役 下野友哉