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リアリティ 2006/05/25

 武田鉄矢が、小説「竜馬がゆく」の原作者である司馬遼太郎の家に行き、
対談終了後帰りの玄関先で、司馬大作家が武田鉄矢にいわく、
「ええ歳として竜馬、竜馬もやめなはれ」
先日自分の誕生日を迎えたけれど、年齢というリアリティは大事にしなければならないと思っている。

 自分よりも若いことが羨ましいことはほとんど皆無だし、それどころか、
・・・大変だよなあ、やだねえ、二度としたくないよねえ・・・と哀れむことが
ほとんどなんだけれど、例外があるとすれば、若ければ若いほど、接する映画や音楽、小説、絵画の作り手がほとんど同年代か年上である点だろう。

 自分より年上のアーティストに背伸びするがごとく、本気で向き合えるのは
素直に羨ましい。
40歳のおっさんがエミネムに酔いしれるのはいかがなもんかと思うし、
60歳を越えた政治家が「竜馬がゆく」を読んで、竜馬、竜馬なんて言って
いたら、国政なんぞ任したくないと思う。

 そう考えれば、若いということは、芸術に対するリーチの長さでいえば、確実に年配よりも黄金権を手にしている。
若いといわれる世代の感性や生き様など特別なものでもなく、大概陳腐な
もんだけれど、若いということが特別、と言うのであればその黄金権の部分
だけであって、
もっと言うなら「芸術とは芸術家より年下の受け手の物である」、と言えるかも知れない。

 太宰治の小説「津軽」に以下の一遍がある。
「ね、なぜ旅に出るの?」
「苦しいからさ。」
「あなたの(苦しい)は、おきまりで、ちつとも信用できません。」
「正岡子規三十六、尾崎紅葉三十七、斎藤緑雨三十八、国木田独歩三十八、長塚節三十七、芥川龍之介三十六、嘉村礒多三十七。」
「それは、何の事なの?」
「あいつらの死んだとしさ。ばたばた死んでゐる。おれもそろそろ、そのとしだ。作家にとつて、これくらゐの年齢の時が、一ばん大事で、」
「さうして、苦しい時なの?」
「何を言つてやがる。ふざけちやいけない。お前にだつて、少しは、わかつてゐる筈たがね。もう、これ以上は言はん。言ふと、気障(きざ)になる。おい、おれは旅に出るよ。」

 これを現代の10代、20代向けに書き換えるなら、
「ね、なぜ旅に出るの?」
「苦しいからさ。」
「あなたの(苦しい)は、おきまりで、ちつとも信用できません。」
「ジム・モリソンニ十七、ジャニス・ジョプリンニ十七、カート・コバーンニ十七、ジミ・ヘンドリックスニ十八。」
「それは、何の事なの?」
「あいつらの死んだとしさ。ばたばた死んでゐる。おれもそろそろ、そのとしだ・・・(略)
となる。

 で、自分とは言えば、27あたりは当に過ぎていて、後者バージョンよりも前者バージョンの人たちが気にかかり始めている。


written by 株式会社ソーソー代表取締役 下野友哉